豊川・17歳”経験”殺人事件




【事件概要】

 2000年5月1日夕方、愛知県豊川市の主婦・筒井喜代さん(65歳)が自宅で何者かに刺殺され、夫の弘さん(当時67歳)も負傷した。
 2日夜、出頭してきたのは17歳の高校3年生・Aだった。殺害の動機について「人を殺す経験がしたかった」と話し、社会に衝撃を与えた。


A


【Aについて】

 両親ともに教師の家庭に生まれる。だが両親はAが1歳半のときに離婚しており、以来祖母を「お母さん」と呼んで育った。母親とはその後、一度も会っていない。祖父が「母親に会いたいか」と尋ねても、Aは「会いたくない」と答えた。これはAの本心か、今の家族に気を使ったのかどちらかわからない。
 小学校に入学する頃、母親はAにランドセルと百科事典を贈った。だが、父親と祖父はランドセルを他の子供にあげてしまい、百科事典は母親からの物だとは言わないままAに渡していた。幼いAにとって母親は「突然出ていって、なんの連絡もよこさない人」という風に映ったのだろうか。

 Aは高校では特進コースに在籍する真面目な生徒だった。高校2年の頃、Aは「社会勉強のためにアルバイトしたい」と申し出るが、祖父は「欲しい物があれば買ってやる。そんなひまがあるなら勉強しろ」とこれを認めなかった。


【殺害】

 5月1日、Aが狙いをつけた家は自身の通う私立高校から100mほど離れた筒井弘さん宅だった。Aと筒井さん夫婦は何の面識もなかった。筒井さん宅を襲った理由についてAは「玄関がたまたま開いていたから入って襲った」と後で語っている。
 だが、襲撃の5時間前の午後1時頃、近くの竹やぶの所有者がシャツの入った紙袋や、刃渡り20cmの草刈鎌があるのを見つけていた。Aはあらかじめ、返り血のついた服の着替えと凶器、25000円の逃走資金を用意していたのである。ちなみにAはこの日、通常通り学校に登校している。

 夕方、A、筒井さん宅に侵入。室内を物色していたところを筒井弘さんの妻・喜代さん(65歳)に見つかり、Aは喜代さんを金づちで殴り、顔を中心に首など約40ヶ所をメッタ刺しにして殺害した。この途中で、弘さんが帰宅し、2人はもみ合いになり、「金ならやる。助けてくれ」と言う弘さんの首などを切りつけた。弘さんは軽傷ですんだ。Aはその後、逃走。


【「寒くなって疲れた」】

 事件後、駆けつけた捜査員が筒井さん宅でAの鞄を発見、さらに近くの竹やぶから血のついた制服とカッターシャツを見つけた。さらにAが事件直後から行方不明になっていることが分かり、逮捕状をとっていた。
 
 2日午後5時頃、Aは名古屋駅前の交番に1人で出頭した。とても落ちついた状態だったという。出頭した理由について「寒くなって疲れた」と答え、筒井さん夫婦殺傷後、竹やぶで着替えて自転車で駅に向かい、名古屋市や犬山市に電車で逃走。ちなみに竹やぶで着替えているところを何人もの人に目撃されていた。夜は公衆トイレの中で過ごし、2日の昼間は岐阜―名古屋間を電車で行ったり来たりしていたという。


【事件後】

 供述
「人を殺す経験をしようと思った。殺人や、それを行なう自分の心理がどういうものか経験して知ることが必要だと思い、計画した。定めた目標を達成することで成長できると考え、1度はためらたが、やり通した」

「殺そうという気持ちを抑えきれませんでしたが、やるべきではありませんでした。人を殺して捕まればどうなるかは理解していて迷いましたが、結局『やらなくてはいけない』という気持ちが上回りました」

「若い未来のある人は(殺しては)いけないと思った」

「亡くなった方やけがをさせた方、自分の家族全員や学校の先生、友達に非常に申し訳ないことをした。自分から直接謝りたい」


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≪参考文献≫

角川書店 「誰か僕を止めてください 〜少年犯罪の病理〜」 産経新聞大阪社会部
KKベストセラーズ 「なぜ『少年』は犯罪に走ったのか」 碓井真史
小学館 「わが息子の心の闇」 総監修・町沢静夫
中央公論新社 「『母性』の叛乱」 別役実 
東京法経学院出版 「明治・大正・昭和・平成 事件犯罪大事典」 事件・犯罪研究会・編
日本放送出版協会 「17歳のこころ その闇と病理」 片田珠美 
双葉社 「人を殺してみたかった 愛知県豊川市主婦殺人事件」 藤井誠二 写真・山田茂
文藝春秋 「退屈な殺人者」 森下香枝


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