八王子・スーパー「ナンペイ」店員射殺事件




【事件概要】

 1995年7月30日午後10時10分頃、東京都八王子市大和田町のスーパー「ナンペイ大和田店」の2階事務所で、女性3人が射殺されているのが見つかった。3人は同店のパート・稲垣則子さん(45歳)、高校2年生でアルバイトの矢吹恵さん(17歳)、非番だった友人の前田寛美さん(16歳)。売上金目的の強盗殺人と見られるが、犯人はいまだわかっていない。


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【凶弾】

 1995年7月30日土曜日。
 東京都八王子市大和田町のスーパー「ナンペイ大和田店」の2階事務所で、3人の女性が死んでいるのが発見されるのは午後10時10分頃だった。
 亡くなっていたのは同店のパート・稲垣則子さん(45歳)、私立桜美林高校2年生で夏休みのため同店でアルバイトしていた矢吹恵さん(17歳)、矢吹さんの中学時代からの友人である都立館高校2年・前田寛美さん(16歳)とわかった。前田さんも同店のアルバイトをしており、この日は非番だったが、矢吹さんを迎えに来ていたという。
 
 第1発見者は稲垣さんの知人であるAさん。Aさんは同日、稲垣さんから「迎えに来て」と電話があり、9時25分頃にスーパーに来たが、いつまでたっても稲垣さんが出てこないため、知人の女性を誘って9時50分頃に再度訪れた。だが、稲垣さんの姿は相変わらず見えなかったので事務所に入ったという。

 稲垣さんは部屋の隅の金庫にもたれ掛かった状態で2発の銃弾を撃たれ死んでおり、腹部に刺し傷もあった。女子高生の2人は部屋の中央で背中合わせにされ、粘着テープで手を縛られ、口を塞がれた状態で、1発ずつ至近距離から頭を撃ち抜かれていた。犯人は金庫にも1発放っており、計5発の銃弾を放たれていた。
 この夜、スーパーの北西30mにある「北の原公園」では近くの人が主催した盆踊り大会が午後9時過ぎまで行なわれていて、太鼓の音などでこの銃声は掻き消されることになった。
 近くを通りかかった人が午後9時過ぎ、銃声のような音を聞いている。しかし、辺りが賑やかだったためか、「花火かな」と思って通りすぎたという。しかし、この夜花火は近くで打ち上げられてはいなかった。

 金庫には鍵がささったままとなっていたが、ダイヤルの二重ロックされていた。こじ開けようとした跡があったが、金・土・日の売上金500万円はそのままとなっていた。

 「ナンペイ」はややこじんまりしたスーパーで、午後5時から店内にはレジ係の矢吹さんと稲垣さんしかいなかった。
 現場となった2階事務所は店舗部分とは直接つながっておらず、外階段からしか入れない。事務所は普段から施錠されていないことが多く、以前にも泥棒が入ったことがあったという。

 スーパーの営業時間は午前10時から午後9時までで、犯人は閉店直後に、3人が勤務を終えて帰り支度をしていたところを押し入ったと見られ、矢吹さんと前田さんを縛ったうえで、銃をつきつけて夜間金庫番だった稲垣さんから鍵を奪い、暗証番号を聞き出そうとしたが、稲垣さんはこれを知らなかったため断念、顔を見られたため殺害したものと見られる。


【遺留品と目撃証言】

 使用された拳銃は回転式38口径のもの。米コルト社製かフィリピン製模造銃「スカイヤーズ・ビンガム・コマンチ」と見られる。88年に起こった「金沢市・金融業夫婦射殺事件」や、99年から01年にかけて大阪市で相次いだ4件の銀行強盗事件に使われた銃も線条痕が似ていたが、関連ははっきりしないという。→関連「吉祥寺・山川巡査射殺事件」中村泰

 背中合わせにされ縛られていた女子高生2人だが、これは犯人が稲垣さんに銃を突きつけて縛らせた可能性が高い。犯人は利き手に拳銃を持っているのだから、片手でテープを巻いていくのは難しい。まして女性とは言えど、3人もいるのだから、そんな隙は見せないはずだ。

 現場には25〜26cmの運動靴の足跡があった。ただこれは全国の量販店に流通する物で、購入者を特定するのは不可能だった。

 以上の点から、当初は外国人による犯行ではないかと見られた。銃を扱いなれていること、3人をためらいもなく短時間で殺めていること、同じ多摩地区である東村山市や福生市で同様の手口のスーパー強盗事件があり、中近東系の外国人が目撃されていたことがその根拠である。


 一方で目撃証言などから、「白い車に乗った若い男」による犯行という説がある。

 事件直前の午後9時ごろ、現場から南へ20mほどの路上に、無灯火で停車している不審な白のトヨタ「チェイサー」を通行人が目撃している。乗っていた男は白っぽい上着を着ていた。所有者は現在も特定できていない。

 また9時15分から35分までのあいだ、現場南西30mほどの交差点で、一時停止せずに西方向へと走り去っていく車が目撃されている。この車もトヨタ「チェイサー」、あるいは「マークU」と見られる。運転していた男は25歳前後で、野球帽をかぶっていた。

 ちなみに第1発見者であるAさんが2度目にやってきた午後9時50分頃、駐車場に白い車が1台停まっているのを目撃している。ただ、この車は銃声のあった時間とずれがあり、上記の証言とはやや矛盾するため、関連がある可能性は低い。

 2006年7月、地元の「八王子防犯協会」は、事件解決につながる有力情報の提供者に懸賞金300万円を贈ると発表した。

 2008年、現場で検出された足跡に、溶接作業の時などに飛散する鉄粉が付着していたことが発表された。犯人が溶接作業に従事していたり、鉄工所に出入りしていたことを示すものである。またこの靴底は広島県内のゴムメーカー製で、約30種類の運動靴に使用されていた。この運動靴は吉祥寺や調布でも販売されていたという。

 事件が起こった「ナンペイ」は1998年に閉店し、今は駐車場となっている。


リンク

警視庁 「事件ファイル」
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/jiken/jikenbo/hatioji/jiken.htm

Yahoo! 自動車カタログ 「チェイサー」
http://car.autos.yahoo.co.jp/m0101/k01011025.html


≪参考文献≫

朝日新聞出版 「真犯人に告ぐ! 未解決事件ファイル」
イーストプレス 「日本凶悪犯罪大全」 犯罪事件研究倶楽部
河出書房新社 「現代日本殺人史」 福田洋・著、石川保昌・編
コアマガジン 「実録戦後タブー犯罪史 弱者を餌食にした卑劣な殺人鬼たち」
講談社 「おい、小池! 全国指名手配犯リスト付き未解決事件ファイル」 黒木昭雄監修 
社会思想社 「20世紀にっぽん殺人事典」 福田洋 
小学館 「高額懸賞金付き!未解決凶悪事件ファイル」 段勲
新人物往来社 「別冊歴史読本 殺人百科データファイル」
新潮社 「新潮45 08年2月号」
宝島社 「別冊宝島 戦後未解決事件史 ―犯行の全貌と『真犯人X』―」
宝島社 「日本の『未解決事件』100」
宝島社 「『洗脳』プロファイリング 重大未解決事件の犯人を追え」 苫米地英人 本橋信宏
東京法経学院出版 「明治・大正・昭和・平成 事件犯罪大事典」 事件・犯罪研究会・編
文藝春秋 「文藝春秋 2011年12月号」
毎日新聞社 「時効廃止論 未解決事件の被害者家族たち」 毎日新聞社会部編 
ミリオン出版 「殺人現場を歩く」 蜂巣敦・著 山本真人・写真
ワニマガジン社 「消えた殺人者たち 誰が彼、彼女を殺したか?」 


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